医薬品開発において、卓上型NMRは、従来の高磁場装置に必要な液体窒素やヘリウムを使用することなく、低分子医薬品の構造を実験室で直接分析することができます。

医薬品製造における卓上型NMRの用途には、原料試験、純度評価、標準品認定、不純物や溶媒の含有量の測定などがあります。卓上型NMRは小型で設置の自由度が高いため、スケールアップやプロセス開発にも最適な装置です。インラインまたはニアラインのプロセス分析技術（PAT）では、卓上型NMRにより、エンドポイントの決定や キネティクス研究から中間体の同定まで、リアルタイムのプロセスフィードバックが実現されます。

品質管理では、力価、製品の均一性、含水率などの検査が課題となりますが、卓上型NMRは、低分子から高分子までの様々なサイズの医薬品にソリューションを提供します。近年開発された TD-NMR 法は、生物製剤から動脈ステント医療機器まで、まったく新しい種類の材料に適用されています。真正性を確保し、偽造医薬品を識別することは、質の高い患者ケアとブランドの完全性を保証するために重要となっています。NMRスペクトルと緩和データ解析のための独自のパターンマッチングと異常値検出アルゴリズムなどの技術により、バイアル製品の品質や安定性を非破壊で決定する卓上型NMRは、医薬品の迅速かつ信頼できる品質保証を提供します。

卓上型NMRは、医薬品や医療機器の枠を超えて、患者の治療を支援する可能性を持っています。最近の論文では、慢性疾患や長期疾患の管理だけでなく、疾病の発症を示唆するメタボロミクスの変化、さらには医療問題が顕在化する前に予防するための介入を可能にするポイントオブケア診断ツールとしての卓上型NMRの可能性が取り上げられています。