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TD-NMRとは?

時間領域核磁気共鳴(Time Domain NMR)は、NMRリラクソメトリーやTD-NMRとも呼ばれ、さまざまな産業分野での品質管理や研究に応用されています。システムはコンパクトな卓上型装置であることが多く、さまざまなサンプルの油分、水分、フッ素、固体脂肪含有量を測定するのが一般的です。多くの場合、簡素化やスループット向上のために、カスタマイズされたソフトウェアや、オートサンプラー・ハードウェアにより自動化されており、インラインでのNMRアプリケーションに適しています。いくつかの業界では、このシステムは単にアナライザー(固体脂肪アナライザー、オイルシードアナライザー、スピンフィニッシュファイバーアナライザーなど)としてブランド化されています。この技術は定量的であり、サンプルに対して非破壊的で、多くの場合、持続性の低い化学抽出法(ソックスレー法など)にとって代わるものとなっています。

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TD-NMR の動作原理とは?

核磁気共鳴 (Nuclear Magnetic Resonance, NMR) の信号は、NMR活性核(通常は1H)を含むサンプルを強力な永久磁石の中に置くことで、これらの核が磁化することよって得られます。その後、磁場強度や調べたい原子核に応じて1回または複数の高周波 (RF, radiofrequency) パルスを印加して、時間領域において1つまたは複数の信号を観測します。

NMR分光法(「NMR分光法とは」を参照)とは異なり、時間領域NMRでは、より低い磁場強度と均質な磁石が使用されます。その結果、RFパルス後の時間領域(通常、自由誘導減衰またはFID (Free Induction Decay) と呼ばれる)には、さまざまな化学的環境に関する振動は含まれません。さらに、分光法のために周波数スペクトルに(NMR 分光法で行われるような)フーリエ変換を適用するのではなく(左)、時間領域の信号を直接分析することもできます(右)。

もっとも単純な解釈では、NMR活性核の中でもっとも高感度で豊富な水素 (1H) の時間領域信号は、相や状態を反映する減衰速度(主に横緩和時間 (T2) で表される)によって、さまざまな成分で構成されます。固体は急速に減衰しますが、液体はさらに時間がかかります。

TD-NMRにおけるサンプルの緩和

TD-NMRの測定方法とは?

したがって、FID信号を用いることで、以下を測定できます。

  • 液体存在下での「固体」信号の割合。例:固体脂肪含量
  • 非晶質成分の割合。例:ポリマーや医薬品における、さまざまな化学的・物理的特性に関するもの
  • さまざまなマトリックス中の「結合」水の割合。例:高たんぱく食品中

他の高周波を印加すると、液体の信号および固体や固体に近い成分の信号が時間的に分離され、これは定量化に必要でとなります。したがって、次のような測定も可能です。

  • 固体や固体に近い成分の信号存在下における「液体」シグナル(通常は油/脂肪)の割合。例:種子の油、食品の脂肪、繊維の紡績仕上げ

TD-NMR 分析の例として、ISO 10565メソッドに従った油糧種子の油分と水分の測定が挙げられます。最初の RF パルスに続いて固体信号が減衰した後、油と水の両方からの信号を測定できます。 2 番目のパルスは、「結合」水(水分 < 10%)からの信号も減衰してハーンエコー (Hahn echo) が生成された後、油分の信号を確実に測定できるようにするために印加されます。水の信号は 2 つの信号の差から決定されます。

TD-NMRを活用する理由は?

周波数領域(つまりNMR分光法)とは異なり、時間領域の信号を測定することには多くの利点と理由があります。

1) この技術は非侵襲的かつ非破壊的であるため、サンプルの前処理を行わず、時には非金属性の容器に入れた状態で「そのまま」測定します。

2) サンプルが固体か液体かにかかわらず、サンプルの性質とも関係なく、サンプルからのすべての水素信号を測定できます。*

3) TD-NMRの磁石は、高い磁場強度や均一性を必要とせず、NMR分光計と比べて低コストです。

    *パルス直後の信号を測定することはできません。つまり、固体信号の一部は直接測定できません。この最初の期間はデッドタイムと呼ばれます。ただし、NMR 信号をゼロ時間まで外挿したり、校正の過程で信号の損失を考慮したりすることもできます。

    TD-NMRが用いられる分野は?

    例を下記に示します。

    産業アプリケーション
    食品スナック菓子、チョコレート、ミルク/栄養パウダー、その他の食品に含まれる脂肪、固体脂肪含量 (SFC, Solid Fat Content) 、エマルション中の液滴サイズ分布、廃水からの脂肪、油、グリース (FOG, Fat, Oil, Grease)
    農業油糧種子(ISO 10565) およびその残渣 (ISO 10632) 中の油分と水分、乾燥オリーブペースト中の油分、乾燥パーム中果皮中の油分、およびその他種子油の収量を最適化するためのもの(食品用およびびバイオ燃料用)
    織物オイルピックアップ (OPU, Oil Pick-Up) とも呼ばれる繊維上のスピンフィニッシュ、糸上のフィニッシュ (FoY, Finish on Yarn)、潤滑剤とavivage、フッ素化およびエラストマーコーティング、布地のローション
    石油留出物中の水素含有量 (ASTM D7171) および持続可能な燃料、石油製品中のワックス含有量、およびワックス中の油含有量
    ポリマーポリプロピレン中のキシレン可溶分、PVC中の可塑剤、ポリマー密度・結晶化度、ゴム中の油分、フッ素含有量
    医薬品歯磨き粉のフッ素含有量、錠剤のフッ素有効成分および水分
    その他粉体中のフッ素(蛍石、アルミナなど)およびアスファルト中の石灰石フィラー

    まとめ: TD-NMR は、サンプルの前処理を必要とせず、材料の含有量を測定するための強力な非破壊的かつ定量的な手法です。装置は、オペレーターの最小限のトレーニングだけで、ほぼすべての環境で使用できます。

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