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卓上型NMR分光法は、高磁場NMRと同様に、NMRの実験によって生成されたスペクトル用いて、分子や化合物に関する化学的・構造的情報を明らかにします。さらに、装置を反応合成と統合したり、製造のライン付近に設置したり、施設周辺に移動したりすることができるため、さまざまな応用が可能です。卓上型NMRが提供する情報には次のようなものがあります。
X-Pulseのような最新の卓上型NMRシステムは、高磁場装置の大型でランニングコストのかかる超伝導磁石を、無冷媒の希土類永久磁石に置き換えています。これにより、装置は大幅に小型化され手軽な価格となり、より幅広い場所に設置できるようになりました。
卓上型NMR装置の主な構成要素は、円筒形のチャンバー(プローブとして知られている)を取り囲む永久磁石と、制御電子機器およびデータ・ステーションです。サンプルはプローブ内に配置され、磁場の影響を受けます。プローブ周囲のコイルから高周波パルスが照射され、サンプル内の化学物質の核を特定の周波数で共鳴させます。これらのコイルは、放射されたNMR信号も検出します。分子内の原子核が電子と相互作用すると、原子核の周波数に微小なシフトが生じます(単位はparts per million, ppm, 百万分の1)。これは化学シフト(ケミカルシフト)として知られており、化学における官能基の種類が異なれば、磁場が異なっても一致しています。水素原子核と炭素原子核の一般的な化学シフトの範囲については、下図を参照してください。
電子だけでなく、分子内の原子核も他の原子核と相互作用します。この相互作用によってスペクトル線が「分裂」しますが、NMR分光法では「Jカップリング」として知られています。この分裂パターンから、分光学者は分子内に存在する他の原子核およびその化学的環境に関する情報を得ることができます。このJカップリングと化学シフトを組み合わせることで、分子の構造解析に役立つNMRの驚くべき能力が生まれます。
下図のスペクトルは、化学シフトとJカップリング・パターンを組み合わせることで、ピークを完全に帰属できることを示しています。クロトン酸エチルという有機低分子は、1H NMRスペクトルで観測される5つの化学的に異なるプロトン環境を有しており、化学シフトは官能基に対応し、信号を構成するピークのパターンは結合した核に関する情報を提供します。
NMR信号は定量的であるため、適切なパラメータで測定されたNMRスペクトルは、サンプル中の分子を同定できるだけでなく、濃度も知ることができます。
さまざまな化学物質に関連する化学シフトおよびJカップリングは、各スペクトルが化学物質または化学物質の混合物の「フィンガープリント(指紋)」になることを意味します。これは、品質保証や品質管理 (QA/QC) のアプリケーションにおいて、性能の低下やサードパーティから供給される化学物質の違いを特定する際に非常に威力を発揮します。 この「フィンガープリンティング」は、コーヒーの認証や、法執行機関による新規薬物 (NPS, novel psychoactive substances) の特定の支援など、幅広い用途があります。
さらに、卓上型NMR分光法は、2次元スペクトルを取得することにより、別次元の分析を提供することができます。1次元スペクトルに見られる通常の化学シフトやカップリングパターンと同様に、どの原子核が互いに結合または相関しているかについての情報が得られます。このような高度な実験は、構造解析実験の強化に役立ちます。
産業 | アプリケーション | |
石油化学 | 反応モニタリング, 品質管理, 合成 | |
医薬品 | 実証プラント(パイロットプラント)およびスケールアップにおける反応モニタリング, QA/QC | |
化学製品 | 反応モニタリング, 低分子構造解析, QA/QC | |
プラスチック | ポリマー試験/検証, QA/QC | |
食品産業 | 偽造品の監視, 成分, 配合 | |
バイオ燃料 | 品質と試験 | |
精油, 食用油, 魚油 | QA, 偽造品モニタリング, 品質・成分モニタリング | |
電池電解液 | 品質・成分、分解モニタリング、製品開発、QA/QC | |
研究 | 構造解析、フローモニタリング、NMRの教育、NMR手法の開発 |
まとめ: 卓上型NMR分光法は、あらゆる研究室や多くの製造環境に構造的・定量的なデータをもたらす強力な非侵襲性・非破壊分析手法です。
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