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解説:

食品偽装問題

NMRは食品偽装対策に貢献できるか

食品偽装は世界的な問題であり、オリーブオイルの品質からアルコールに添加されるものまで、あらゆるものに影響をおよぼしかねません。核磁気共鳴法(NMR)は、一般消費者向けに販売されている食品に何が含まれているかを、従来の方法よりも短時間で正確に把握することが可能な手法です。

私たち全てに関わる不正問題

食品の信頼性をめぐる問題は、サプライチェーンがグローバルに展開されていることや、低価格で製品を供給しようとする行動などから、複雑なものとなっています。例えば、1枚の板チョコを作るために使われる原材料は、最終製品が作られる前にすべて別々の大陸で作られていることもあります。そのため、原材料の品質を確保することが難しくなってしまいます。

食品偽装は、世界の食品産業で毎年約250億ポンドの損失を出しています。精製糖の添加から、2008年に中国で発生したメラミン入り粉ミルクによる6人の乳児の死亡事故まで、さまざまな事例があります。

食品に添加物を加えることは、多くの消費者が思っている以上に日常的に行われており、購入した製品の多くが不純物で汚染されてしまっているのが現状です。例えば米国では、2013年の調査で、販売されているマグロ製品の59%に、実は他の魚が含まれていることが明らかになっています。

イノベーションの実現

従来、食品安全業界では、製品の化学組成を調べるためにガスクロマトグラフィーやポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が利用されてきました。これらの方法では、効率的に測定するために高価な試薬を大量に使用し、また測定結果を得るまでに数時間かかることもあります。X-Pulseのような卓上型NMR装置は、液体ヘリウムや液体窒素、圧縮ガスを必要とせず、数分で測定結果を出すことができます。また、X-Pulseはスペクトル分解能が向上しているため、物質の化学組成のわずかな変化にも非常に高い感度で検出することができます。

これらの特長により、卓上型NMR分析は、食品偽装対策において幅広い応用が期待されます。以下に、この方法により効率的に問題の検出を行い、世界中の消費者が製品をより安全に利用できるようになる方法をいくつかご紹介します。

食肉

食肉の不正表示で最近最も有名な例は、2013年に欧州で起きた馬肉騒動かもしれません。牛肉100%と表示された食品に、大量の馬肉が含まれていたことが発覚したのです。

食肉の種類によって、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸などの脂肪酸の組成が異なり、NMRスペクトルの特定領域として検出されます。X-Pulseのようなシステムと高度なデータ処理により、サンプルの脂肪酸プロファイルを測定し、そのサンプルが要求されているものであるかどうかを判断することができます。

食用油

ヘーゼルナッツオイルは、1つのロットから作られる製品の量を増やすため、より高額なオリーブオイルに添加されることがよくあるそうです。

「エクストラバージン」と表示されているオリーブオイル製品は、精製されたオイルやナッツや種子からの他のオイルを含んでいないはずです。ところが、ヘーゼルナッツオイルとオリーブオイルの脂肪プロファイルが非常によく似ているため、この種の不正を正確に検出することは困難となっています。しかし、NMRを使用することにより、純粋なオリーブオイルと不純物の入ったオリーブオイルの脂肪酸組成のわずかな違いを、1サンプルあたり5分以内で検出することができます。

 

アルガンオイル

アルガンオイルは、脂肪酸とポリフェノールを豊富に含み、地中海沿岸の健康的な食生活の中心的な存在です。また、化粧品業界でスキンケアやヘアケア製品に広く使われるようになり、1リットルあたり約30ドルという価格にまで高騰しています。そのため、コストを下げるために安価な植物油を配合するメーカーも出てきました。

卓上型NMR分析は専門の研究室で行う必要がないため、その場での検査に効果的なソリューションとなっています。脂肪酸プロファイルの迅速な分析が可能なX-Pulseにより、 確認済みの純アルガンオイルと不確かなサンプルを迅速かつ簡単に比較することができます。

 

コーヒー

コーヒーは、食品偽装の商業的論理をよく表していると言えるでしょう。100粒に1粒のアラビカ豆を、大幅にコストの安いロブスタ豆に置き換えることで、十分な量があれば生産コストを大幅に削減することができます。2018年の英国の研究者による調査では、調査した「アラビカ種100%」製品のおよそ10%にロブスタ豆が含まれていることが判明しました。

2つの豆を正確に区別する16-O-メチルカフェストール化合物のレベルを検出するために使用されるNMR法は、前の3つの例で概説した脂肪酸分析とは少し異なります。この化合物が NMR スペクトルにより示される特定のピークを識別することで、分析者はサンプルに含まれるロブスタ豆の量を 2%以下のレベルまで正確に表示することができます。

はちみつ

2019年、イギリスの小売業者Tescoは、自社ブランドの「100%純粋はちみつ」数点を検査した結果、精製糖から作られたシロップが大量に含まれていることがわかり、商品を回収しなければならなくなりました。

高磁場NMRは、以前の方法よりも信頼性が高いため、はちみつサンプルの検査に使用されました。以前の検査では、はちみつにコーンシロップが含まれていることを明らかにするために、2つの主要な炭素同位体、炭素12と炭素13を確認するだけでよかったのです。しかし、他の安価な砂糖シロップは、これらの同位体に非常によく似たプロファイルを持っており、これらの方法で不正な製品を識別することは非常に困難です。

一方、NMR分析では、特定の化合物の化学的指紋を識別することができます。このため、現在はちみつに添加されている様々なシロップや砂糖液の検出に適しているだけでなく、新しいタイプの不正品も発見することができます。多くのはちみつ不純物検査は、高磁場NMR装置を用いて行われてきましたが、卓上型装置の継続的な開発により、これらの結果の多くは通常の実験室で達成可能なものとなっています。

アルコール飲料

偽造酒は消費者にとって大きなリスクとなります。安価な蒸留酒を高級ブランドと偽って表示するケースもありますが、メタノールなどの危険な代替アルコールが含まれていたり、重要な添加物が省かれていたりするケースもあります。不正行為者の巧妙化により、光学的分光法のような従来の方法では効果が低くなってきています。

NMRは、分析者が複数の識別成分を同時に探し、定量することができるため、このギャップに踏み込んでいこうとしています。例えば、X-Pulseのようなシステムは、粗悪なアルコール飲料に含まれるエタノールとメタノールの両方を同時に検出したり、さまざまな飲料のアルコール度数を単純に定量したりすることができます。

卓上型 NMR – シンプル、迅速、効果的

このように応用範囲が広いため、NMRは食品偽装との闘いにおける貴重なツールとなっています。X-Pulseのような卓上型NMR装置は、さまざまな実験室に設置でき、高額な試薬や特別なトレーニングを必要とせず、正確な結果を迅速に提供することができます。食品偽装や安全性のように複雑で広範な問題に直面している場合、卓上型NMRにより、分析者が迅速かつ自信を持って対処できるようになります。

X-Pulseの性能や卓上型NMRがもたらすメリットをお客様ご自身でお確かめいただくため、
どうぞ弊社までご連絡ください。

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