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温度可変オプション

卓上型NMRで真の温度可変NMRスペクトルを実現

X-Pulse 広帯域卓上型NMR分光計は、温度制御された外部ガスフローを使用してサンプル温度を変化させることにより、温度可変測定が可能です。これにより、最低でも+20℃から+60℃の温度範囲で試料温度を安定させることができます。この範囲外の温度設定の場合は、設置状況に応じて実現可能となります。X-Pulse内で使用されている磁石の温度変化を0.001℃以内で安定に保ちながら、最適なスペクトルを得ることができます。

例として、NMRによる温度依存性物性の直接測定、特定の温度範囲において安定な系の分析、溶液中の化学プロセスの熱力学およびキネティクス(反応速度論)の研究、同一条件下での様々な技術による一貫した測定が可能であること、などです。そのいくつかを紹介します。

NMRを用いた温度計測

NMRスペクトル測定では、単純な反磁性体のシグナルの大部分は、温度変化に比較的敏感ではありません。ただし、水酸化物(水)シグナルの化学シフトは温度によって大きく変化します。水酸化物シグナルとアルケンシグナルを併せ持つ適切な純化合物を選択すれば、2つのシグナルの化学シフトの差(Δδʜ)から試料の温度を算出することができます。この方法にはエチレングリコールやメタノールがよく使われ、スペクトルから試料温度を計算する式が確立されています (J. Magn. Reson., 1982, 46, 319-321)。

エチレングリコール (HOCH₂CH₂OH): T(℃) = 193.35 – 102.00 × Δδʜ

温度範囲: 0 ~ +140 ℃

エチレングリコール, NMRを用いた温度計測
2 ~ 71℃の温度範囲における100%エチレングリコールの¹H NMRスペクトル

メタノール (CH₃OH): T(℃) = 135.85 – 36.54 × Δδʜ – 21.85 × Δδʜ 2

温度範囲: −95 ~ +57℃

メタノール, NMRを用いた温度計測
2 ~ 55℃の温度範囲における100%メタノールの¹H NMRスペクトル

卓上NMRを用いた温度感受性サンプルの測定について、詳しくはお問い合わせください

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拡散係数の温度依存性

溶液中の化学種の拡散係数は、多くのアプリケーション、特に電池やその他の電気化学デバイスの電解質成分の分析に有用です。拡散係数は、パルス磁場勾配スピンエコー(PGSE)パルスシーケンス(詳細はアプリケーションノート17参照)を用いてNMRで直接測定することができますが、大きな温度依存性があります。

したがって、デバイスの動作が予想される全温度範囲にわたって拡散定数を直接測定することは、システムを完全に理解するために不可欠です。X-Pulse広帯域卓上型NMR分光計を温度可変モードで使用することにより、電池電解質溶液に通常含まれるすべての核種(¹H、⁷Li、¹B、¹⁹F、²³Na、³¹P)について、最新のリチウムイオン電池の標準動作範囲全体で拡散定数を直接測定することが可能になります。例えば、55℃の温度範囲でLi+の溶液から得られた一連のPGSEスペクトルは、温度が上昇するにつれて、低い勾配強度で信号の減衰がより顕著になることを示しています(温度が上昇すると拡散定数が増加することを示しています)。

自己拡散係数の温度依存性についての詳細は、お問い合わせください

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⁷Li PGSE
Li+の⁷Li PGSEスペクトル ( +2~+56℃ )

キネティクス(化学反応速度論)

3-ジメチルアミノアクロレイン, シス-トランス平衡
重水素化クロロホルム中の3-ジメチルアミノアクロレインの¹H NMRスペクトル( 2~+48℃)

溶液中では多くの化学反応過程が起こりますが、温度可変NMRを用いるて、これらの過程をモニターし、熱力学的および化学反応速度論的パラメータを算出するために使用することができます。

その一例が、3-ジメチルアミノアクロレインにおけるアミノメチル基のシス-トランス異性化であり、異性化が起こる時間スケールはNMR実験の時間スケールと同じであるため、容易に観察することができます。炭素-窒素結合の回転が遅くなるような低温領域では、2つのメチル基は¹H NMRスペクトルで別々のピークを示します。一方で、高温領域では回転が速くなり、NMRでは2つのメチル基は等価に現れ、1つのピークとなります。温度上昇に伴う2つのピークの合体から、炭素-窒素結合の回転に対する熱力学的障壁を計算することができます。

卓上型NMRを用いたキネティクスの測定についての詳細は、お問い合わせください

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